② フリーメーソンとの出会い - 信仰の目覚め
・旅先で、ピエールはフリーメーソンの重鎮のバスジェーエフと出会います。
・神を信じていないピエールに対してバスジェーエフは次のように言います。
あなたは神をご存じない、それだからあなたは不幸なのです。あなたは神を知らぬと言われるが、神はここにおられる。神はわたくしのうちにおられる。神は私の言葉のうちにおられる。
・はじめはバスジェーエフの言葉に反発をしていたピエールの心が変わっていく様子は次のように描かれています。
ピエールは、心臓の凍るような思いをし、目を輝かせてフリーメーソン組合員の顔を見つめながら、相手をさえぎろうとも、質問をもちかけようともしないで、じっと聴きいるのであった。そして、この見も知らぬ他人の言うことを心底信じてしまった。彼が信じたのは、フリーメーソン組合員の言葉のはしばしにあらわれる理のつんだ論法なのか、それとも、フリーメーソン組合員の言葉をとぎらしてしまうほどの烈しい声のふるえや、言葉の抑揚や、自信にみちた真摯な調子や、終始一貫した信念のうちに老いはてたような炯炯たる年寄りらしい眼つきや、その全存在から放射する沈着と、堅固と、自己の使命の自覚に対する子供らしい信頼なのかーなにかはしらぬが、ピエールは心の底から信じたいと希望を感じ、かつ、本当に信じたのである。
(このくだりは、釈尊が悟って、はじめての弟子となる五人の従者に悟りの内容を聞かせた場面を彷彿させます。)
・そしてピエールは次のように質問をします。
「どいうわけで人間の知性は、今あなたのおっしゃる大知識に到達できないのでしょう」
・このあとのバスジェーエフとピエールの会話は次のように続きます。
フリーメーソンの男は例のつつましい父親のような微笑を浮かべた。
「最高の智慧と真理とは、われわれが自分の心にとりいれようと望んでいる、清浄な液体のようなものだ」と彼は言った。「ところで、この清浄な液体を穢れた器に入れて、その浄不浄を論ずることができようか? 人間はただ自己の内的浄化によってのみ、内容たる液体をある程度まで浄化することができるのだ。」
「そうです、そうです、それはまったくです!」とピエールはうれしそうに叫んだ。
(7月7日)
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